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【ポアソン過程】2人以上が同時に到着する確率を無視できるワケ

【ポアソン過程】2人以上が同時に到着する確率を無視できるワケ ポアソン過程
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どうも!初めましての方は初めまして、初心者のWebサイト勉強のとみーです!

珍しい事象が発生する回数をモデル化することができるポアソン過程には、その珍しい事象が

同時に複数回発生する確率を無視できる

という性質があります。

珍しい事象としては

  • 1日の交通事故件数
  • コールセンターで1時間あたりにかかってくる電話件数
  • 1分間で発生するWebサーバーへのアクセス数

などが考えられます。

よく店の来客人数が例として用いられるため、この場合は「2人以上が同時に到着する確率を無視できる」ということができます。

とみー
とみー

今回は、その事実を数学的に証明していきます!

対象レベル

確率の基本的な知識がある方(高校数学〜大学入門)

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2人以上が同時に到着する確率を無視できるとは

証明を行う前に、そもそも

同時に複数回発生する確率を無視できる

、もっと具体的に

2人以上が同時に到着する確率を無視できる

とはどういうことかを整理しておきましょう。

ポアソン過程の直感的な理解

詳しくはこちら記事で解説していますが、店に客が来店するというのは希少事象として考えられます。

店に客が来店するというのは直感的には「珍しい」事象ではありませんが、例えば「1秒間に客が来店する確率」のように非常に短い時間を考えると、確率的には「珍しい」事象といえます。

そこで、時刻 $t$ までに来店した累計人数を $\Lambda (t) $ とすると、$\Lambda (t)$ はポアソン過程です。

とみー
とみー

ポアソン過程は次のように図で見るとわかりやすいです。

時刻 $t_1$ に初めての来客があり、2回目の来客は $t_2$、その次は $t_3$、…のようになっているのがわかりますね。

ちなみにこのとき、ポアソン過程 $\Lambda(t)$ はポアソン分布 $Pois(\lambda t)$ に従うので、あるパラメータ $\lambda > 0$ に対して

$\Lambda(t) \sim Pois(\lambda t)$

が成り立ちます。

2人以上が同時に到着する場合

2人以上が同時に到着する確率を無視できるというのは、言い換えると

同時刻に到着する客は1人だけ

ということになります。

図で見ると、来客時の $\Lambda(t)$ の増え幅が常に1ということです。

つまり、下のような状況は発生しません。

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本当に同時に複数人が到着する確率を無視していいの?

家族連れの来店などの場合、同時に複数人が到着する状況が現実には存在します。

それでは、「同時に複数人が到着する確率は無視できる」というポアソン過程は、現実世界の問題に適用できないのでしょうか?

これには、ポアソン過程の設定の仕方が関係してきます。

ポアソン過程は

希少事象が発生した回数の総和

をモデル化することができますが、家族連れで出かけた場合、

  • 家族全員が
  • 同じ店に
  • 同じ時刻に

到着するのは果たして「希少」と言えるでしょうか?

とみー
とみー

希少どころか、みんなでグループ行動しているのだから「当たり前」ですよね。

そのため、友達や家族連れなどグループで行動する客の来客数に対してポアソン過程を適用することはできません

一方で、グループごとの行動は当然バラバラなので、「到着数」に対しては適用することができます。

「何人到着したか」ではなく、「何組到着したか」ならOKということですね!

とみー
とみー

ポアソン過程をどのように適用するかが大事なんですね〜。

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2人以上が同時に到着する確率を無視できることの証明

実際に証明していくために、まず証明すべきことがらを数学的に表現します。

証明すべきこと

「2人以上が同時に到着する確率を無視できる」というのは、言い換えると

微小時間 $[t, t+h]$ 内の到着数が2以上となる確率が0

です。

$\Lambda(t)$ が時刻 $t$ までの到着数を表すので、微小時間 $[t. t+h]$ 内の到着数は

$\Lambda(t + h) \; -\; \Lambda (t)$

と表せます。

つまり、証明したいのは

$\displaystyle \lim_{h \rightarrow 0} \left \{ \mathbb{P} (\Lambda(t + h) \;-\; \Lambda (t) \geq 2) \right \} = 0$

です。

定常増分性

証明には、ポアソン過程の定常増分性を使います。

定常増分

任意の $h$ について、

$\Lambda(t + h) \; -\; \Lambda(t) \sim Pois(\lambda h)$

とみー
とみー

あと1つ、ロピタルの定理という定理を使います。

ロピタルの定理

ロピタルの定理

関数 $f(x)$、 $g(x)$ について、

  • $\lim_{x \rightarrow a} f(x) = \lim_{x \rightarrow a} g(x) = 0$
  • $g'(a) \neq 0$
  • $\lim_{x \rightarrow a} \frac{f'(x)}{g'(x)}$ が存在する

ならば

$\displaystyle \lim_{x \rightarrow a} \frac{f(x)}{g(x)} = \lim_{x \rightarrow a} \frac{f'(x)}{g'(x)}$

簡単にいうと、求めたい極限が $\frac{0}{0} $ で直接計算するのが難しいときに、分母と分子をそれぞれ微分したものの極限をとって求めていいということです。

とみー
とみー

それでは証明にとりかかります!

証明

まず、分母に $h$ をつけた

$\displaystyle \lim_{h \rightarrow 0} \frac{\mathbb{P} (\Lambda(t + h) \;-\; \Lambda (t) \geq 2)}{h}$

について考える。

ポアソン過程の定常増分性より $\Lambda(t + h) \; -\; \Lambda(t) \sim Pois(\lambda h)$ だから、分子は、

$ \begin{eqnarray} \mathbb{P} (\Lambda(t+h) \; -\; \Lambda(t) \geq 2) &=& \mathbb{P} (\Lambda(\lambda h) \geq 2) \\ &=& 1 \; -\; \mathbb{P} (\Lambda(\lambda h) < 2) \\ &=& 1 \;-\; \color{blue}\mathbb{P} (\Lambda(\lambda h) = 0) \color{black}\;-\; \color{green}\mathbb{P} (\Lambda(\lambda h) = 1) \end{eqnarray} $

パラメータ $\lambda h$ のポアソン分布の確率質量関数

$\mathbb{P}(\Lambda (t) = i) = \displaystyle \frac{e^{-\lambda h t} (\lambda h t)^i }{i!}$

だから

$ \begin{eqnarray} \mathbb{P} (\Lambda(t+h) \; -\; \Lambda(t) \geq 2) &=& 1 \;-\; \color{blue}e^{\lambda h}\color{black} \;-\; \color{green} \lambda h e^{\lambda h} \end{eqnarray} $

ここで、この極限を考えると

$ \mathbb{P} (\Lambda(t+h) \; -\; \Lambda(t) \geq 2) \underset{h \rightarrow 0}{\longrightarrow} 0$

となる。

さらに、この分子を $h$ について微分すると

$ \frac{d}{dh} \mathbb{P} (\Lambda(t+h) \; -\; \Lambda(t) \geq 2) =\color{red}\lambda e^{\lambda h} \;-\;\lambda e^{-\lambda h} \;+\; \lambda^2 h e^{\lambda h}\color{black}$

したがって、ロピタルの定理より

$ \begin{eqnarray} \displaystyle \lim_{h \rightarrow 0} \frac{\mathbb{P} (\Lambda(t + h) \;-\; \Lambda (t) \geq 2)}{h} &=& \displaystyle \lim_{h \rightarrow 0} \frac{ \color{red}\lambda e^{\lambda h} \;-\;\lambda e^{-\lambda h} \;+\; \lambda^2 h e^{\lambda h} \color{black}}{1} \\ &=& \displaystyle \lim_{h \rightarrow 0} \lambda^2 h e^{\lambda h} \\ &=& 0 \end{eqnarray}$

ゆえに、

$ \begin{eqnarray} \lim_{h \rightarrow 0} \mathbb{P} (\Lambda(t + h) \;-\; \Lambda (t) \geq 2) &=& \displaystyle \lim_{h \rightarrow 0} \left \{\frac{\mathbb{P} (\Lambda(t + h) \;-\; \Lambda (t) \geq 2)}{h} \times h \right \} \\ &=& \displaystyle \lim_{h \rightarrow 0} \frac{\mathbb{P} (\Lambda(t + h) \;-\; \Lambda (t) \geq 2)}{h} \times \lim_{h \rightarrow 0} h \\ &=& 0 \end{eqnarray}$

まとめ

今回は、2人以上が同時に到着する確率を無視できるというポアソン過程の性質について、証明と合わせて解説しました。

とみー
とみー

決して難しい話ではないので、証明にだけ注意すれば大丈夫です!

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